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~アルバム『05』各楽曲の解説~

約5年ぶりにアルバムをリリースします。
今回も様々な方にご協力いただき、僕としても思い入れ深い作品に仕上がりました。
題材は主に民謡ですが、各楽曲について少し僕なりの解説を交えてご紹介したいと思います。

01.南部牛追い唄Ⅱfeat.平沢進(岩手民謡)
「02」にも収録した岩手が誇る民謡、アレンジ第二弾。歌詞からも牛方達の誇り高さや凛とした冷気の中、奥羽山脈や北上山地を越えていく雄大な景色が伺えるので、原曲への敬意も込めて今回はさらに”静寂の美”を追求してみたいと考えました。インドのタブラのビート感を取り入れたリズムとブルガリアンヴォイス調の多重コーラスを重ねた楽曲に、圧巻だったのは今回特別にご参加くださった平沢進さんのギターソロです。中盤からギターの音色が響くと静寂感の中にキラキラとした風景が広がり、号令のような一音のフレーズから一気に新たな世界観が押し寄せます。後半はギターがリードしていきます。僕にとっても衝撃と感動の作品となりました。

02.ソーラン節~Hyper Beat Ver.~(北海道民謡)
ライブでも度々披露してきたRemixVer.のアレンジをベースにエフェクトとビート感を飛躍させた作品。ライブでは観客の皆さんとの掛け合いもできるよう意識してアレンジしました。オリジナルパートも取り入れており、間奏では北海道生まれの夢時のギターが鳴り響く心地よい仕上がりです。言わずと知れた名曲ですので、今後も公演を経ていく中でさらに発展していく可能性もあるのではと思っています。

03.下津井節~雅Ver.~(岡山民謡)
「03」にも収録していた下津井節。かつて北前船の交易港として栄えた下津井港の花街が舞台ということで、豪華な衣装を纏った花魁の華やかさだったり、お座敷の雅やかな情景をイメージして今作は少し艶やかなアレンジに仕上げました。楽しい宴というだけでなく、歌詞から読み取れる切なさだったり、厳しい環境下に耐える女性の強さや気高さみたいなものを大切に表現できたらと思いました。

04.常磐炭坑節(茨城・福島民謡)
福島県双葉郡から茨城県日立市まで広がった炭田、常磐炭坑。労働歌で情景が浮かぶ詞と軽快なメロディーが特徴的ですが、特に「男純情とよ~」の下りでは、男気溢れる中にもユーモアがあった今は亡き尊敬していたいわきの知人と人物像が重なります。NeoBalladでは初めて生ベースを取り入れた作品となります。テクニカルなベーシストとして有名なcali≒gariの村井研次郎が参加してくれました。ベースのソロパートを設けて、かなり自由に演奏してもらいましたが楽曲に馴染むプレイはさすがでした。この曲ができたことで僕自身も、今後の楽曲制作の可能性が広がったように思います。

05.ノーエ節(静岡民謡)
農兵節とも呼ばれる三島の民謡。しりとり歌になっていて楽しい曲なので、今回は4ビートでJazzyなアレンジにしました。今作でも夢時のギタープレーが素晴らしいです。ハード、ソフト、Jazzyとなんでもこなせる人なんだねーって、改めて尊敬しました。今後とも宜しくお願い致します(笑)三味線は静岡出身の孤高のシャミセニスト寂空が想いを込めて弾いてくれました。寂空は今作でも色々弾いてくれてるけど、唯一全てのアルバムに関わってくれているNeoBalladに欠かせない存在です。世界デビューも控え、益々活躍していくと思うので今後の展開が楽しみです。

06.てぃんさぐぬ花(沖縄民謡)
たくさんの方に愛されている沖縄の教訓歌。やはり沖縄ならではの風や海を感じる爽やかな曲です。
タイトルにもなっているてぃんさぐというのは鳳仙花の花を指します。歌詞も沖縄の言葉でできているので一見難解ですが、やさしさに溢れていて聴いていて癒されます。海の雫が弾けるようなイメージで、曲中にオリジナルパートを加えさせていただきました。テクノポップな不思議な心地よさを受ける楽曲に仕上がったと思います。

07.田名部おしまこ(青森民謡)
2014年に下北半島のむつに演奏で伺った際に制作した曲です。素朴でかわいらしい曲なので、原曲の良さを生かしつつ、後半のワンコーラスをストリングスでシーンの色を付けをしました。恐山にも連れて行っていただいたのですが、紅葉が艶やかでこの世とは思えないくらいの美しい景色が強烈に印象に残っていたのでそんな想いも込めてアレンジしました。

08.男なら(山口民謡)
歴史と直結している曲で時代背景も手伝い長州女性の凛とした気質や気迫のようなものが色濃く伝わってきます。民謡はアレンジを手掛けてみて初めてこんなことが言いたかったのかなとか心情に接することができるように思います。この曲も、意図せず重厚な世界へ導かれました。3番の歌詞は高杉晋作が詠んだ都都逸が元とされているという説も。映像が浮かぶ詩の世界観にも注目です。

09.貝殻節(鳥取民謡)
「何の因果で」からはじまる労働歌の代表みたいな曲。原曲からは過酷さを紛らわすかのように淡々と軽快に歌い上げられる中、家族のことを想ってがんばる父の背中が見えるような気がしました。冒頭では浜辺で憂いに満ちている雰囲気で三味線ソロを取り入れたり、眼下に日本海が広がるイメージを形にしました。

10.博多どんたく(博多民謡)
「ぼんちかわいや」という曲名で博多どんたくで踊られ地元で親しまれている民謡。一言で言うと粋な曲です。7番まであるのですが、とてもかわいい歌詞で物語性も感じられるのであっという間に聴けてしまう感じです。愛嬌だったりコミカルさを活かしつつ、元の楽曲に比較的忠実に仕上げました。

11.さわぎ(座敷唄)
歌舞伎の「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」という演目などでもお馴染みの曲。江戸吉原の情景描写の曲として使われる座敷唄です。この曲は現役歌舞伎音楽演奏家の長唄三味線奏者 杵屋栄之丞の三味線を前面にフィーチャーして作りました。ここ数年、彼との出逢いにより長唄や端唄などのアレンジもいくつか行ってきたのですがその奥深さに非常に魅了されています。長唄の構成にも多くみられますが、どんどん場面に応じて曲調が展開していく面白さがあります。FUNKのビート感を意識して融合を試みました。

12.牛深ハイヤ節(熊本民謡)
牛深で誕生し、船で各地の港へと伝わった「ハイヤ系民謡」の元祖。「ハイヤ」は、牛深を出港して北上する帆船に欠かせない「南風(はえ)」が語源だそうです。この曲を聞いて真っ先に思い浮かんだのは、天草灘の綺麗な海の色でした。なので、そんな海を意識してトロピカル?(笑)なコード進行を探るようにアレンジしました。夢時のギターで広がりを持たせ、対象的に歌の掛け合いで楽しさを追求しました。ボーカルの若狭とミカド香奈子さんの掛け合いは、まるでデュオのような最高の仕上がりです。ライブでもきっと盛り上がるのではとご披露するのが楽しみです。

13.会津磐梯山~喝祭きたかたVer.~(福島民謡)
ダンスや音楽が盛んで、街ぐるみで多くのイベントが開催されている会津喜多方。2018年に喝祭きたかた実行委員会より依頼を受けて演舞の課題曲としてよさこい風にアレンジしたのがこちらの楽曲です。「よさこい」制作にはセオリーがあるそうで、よさこいに造詣の深いマニピュレーターの小林秀行にアドバイスをいただきながら作りました。若狭の故郷ということもあり、今後も地元の皆さんと一緒に地域を盛り上げていけたらとさらにブラッシュアップし、アルバムのトリを飾るに相応しいアレンジに仕上がったと思っております。

令和三年 三月
上領 亘



~僕が感じた民謡の世界~

思い返してみると僕は、ブルガリアンヴォイス、セリック、古楽、ブラジルやアジア系など諸外国の民族音楽を好んで聴いてきましたが、自国の民謡には触れてきませんでした。

僕が活動を開始した80年代から90年代というのは、西洋音楽への憧れが強く、和の世界は敬遠されがちな雰囲気がどことなく漂っていた故かも知れません。
しかし、当時の海外には、東洋の世界観を上手く取り入れているアーティストも数多く存在しており、逆輸入された「和」や「東洋」の世界に深い感銘や感動を受けつつも、 日本人である自分にそのような表現ができていないという歯痒さや、嫉妬心さえも覚えたことを思い出します。
その想いは、僕自身の音楽活動の一端に反映され、どこか情熱的になれない自分を感じながらも「表現者」として自分の確かな居場所を探しあぐねていたようにも思えます。

こうして20年余りを過ごしてきたある日、民謡をアレンジする仕事に携わる機会に恵まれました。
これまで触れてこなかった民謡の謎めいた旋律やリズム感。

戸惑いつつも手をつけてみると、思った以上に面白い世界に仕上がり、新鮮な衝撃を感じたのを昨日のことのように鮮明に思い出します。

この時に受けた衝撃が発端となり、もっとこの世界観を突き詰めたいという衝動からNeoBallad(ネオバラッド)を結成いたしました。
2012年に手探りで始動したプロジェクトでしたが、今ではここが【自分自身の居場所】と感じるほど僕の持ち得る要素を惜しみなく注げる場所となりました。

日本の民謡は本当に素晴らしい。
日本人はこんなにもおおらかで、ユニークなのかという感動と共に、先人達の想いを胸に響かせてくれます。


天地人神心

~天地人神心~TenChiJinShinShin


【天地人神心】(てんちじんしんしん)は僕が感じた民謡の世界を表した造語です。

「天心」「地心」「人心」

そして「神心」


これら四つの「心」は、どれか一つが欠けても成り立ちません。

互いを思いやり、敬う。

その、すべての想いを受け入れた一つの心。

「天地人神心」の心と共にNeoBalladは活動して参ります。

僕が日本民謡に感じた思いを独自の解釈を加えて体現する『NeoBallad』
ジャンルの枠組みを超えた音楽やその思いを、
NeoBalladというフィルターを通して共有することが出来れば幸いです。

平成二十五年 一月
上領 亘

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